気付いたらゴーストでした。
 あまりにも楽しそうに作業をするものだから、一体どんな恋愛話を描いているのだろうと思い、尋ねた。

「この二人はね。すでに赤い糸で繋がってるから、どうやっても結ばれる運命なのよ?」

 ……ハイハイ。

 うふふ、と笑い、悦に入る彼女の頭は、きっと年から年中ピンク色で、お花畑が広がっているに違いない。

 なんというか……。本当におめでたい人だ。

 呆れて嘆息しながら、それでも、と不思議に思う。

 僕は何でこんな変人を可愛いと思ってしまうんだろう。

 *

 翌日。

 またもや布団で寝そびれた彼女は床からのっそりと起き出し、「うぅ〜ん」と伸びをした。

 冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出し、オヤジさながらに腰に手を当て、一気飲みした。

「元気ハツラツ!」

 ……うん、分かったから。

 花純さんのこの変なテンションにも、もう慣れた。

 僕は生暖かい目で彼女の挙動を見守った。

 昨日同様に、バッチリ化粧を決めた彼女はやっぱり可愛い。

 今日は土曜日。

 市立病院に行こう、と彼女と約束をした日だ。

 花純さんに付いて外に出て、バイト先の花屋で彼女は形ばかりの花束を買ってから病院へと向かった。

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