気付いたらゴーストでした。
 病院に着き、真っ先に受付へ向かう彼女を見て、僅かながら緊張が走る。

 一体なんて言うつもりなのだろう?

 僕は花純さんのすぐそばで事の成り行きを見守った。

 花純さんは臆さずに、受付の女性へ「すみません」と声をかけた。

「私、(すめらぎ)さんと仲良くさせて貰っていた花屋の者なんですが……。お見舞いしたいので病室を教えてもらえますか?」

「……申し訳ありませんが、患者さんはフルネームでお願いします」

 あの、とそこで言い淀む。

「皇 駿くんのお母さん、としてしか認識していなくて……。ごめんなさい」

 女性はジロリと彼女を見て、しばし考えた後、「少々お待ち下さい」と言ってパソコンを操作した。

(すめらぎ) 静子(しずこ)さんですね。ちなみに駿くんが亡くなった事は……?」

「あ、はい。存じております。なので、お悔やみだけでも言いたいんですけど……やっぱりまだ日が浅いから、難しいですかね?」

 受付の女性は微かに口角を上げた。

「そうですね。できれば駿くんの話題は避けて貰えるとありがたいです」

「分かりました」
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