気付いたらゴーストでした。
『ごめん。オレはただ……"自分"を探していて』

 キミのお母さんに用があるわけじゃないというニュアンスで答えると、少年は少なからずホッとし、次いで首を傾げた。

 おそらくこの少年は、先日亡くなった皇 駿くんだろう。

 本人がここにいるという事は、僕は皇 駿なる人物ではない。従って静子さんも赤の他人。お母さんじゃない。

『自分をさがしてるってどういうこと?』

 駿くんはあどけない表情で瞳をぱちぱちさせた。さっきまでの敵意は微塵も感じない。

『オレ、さ。自分がどこの誰だか分からなくて。記憶と一緒に成仏の方法も探してるんだ』

 僕は友好的な態度に心がけ、駿くんに近付いた。

 駿くんは丸椅子から立ち上がり、ベッドにいる母親に『お母さんまってて』と優しく語りかける。

 そして僕の元まで歩み寄った。

『あのね……。なんかよく、分かんない』

『あ……』

 そうか、言っている意味が伝わっていないんだ。

 僕は駿くんに事のいきさつを説明した。

 気付いたら死んでいたという事。

 知らないお姉さんと一緒にいて、今現在、自分が誰かを探している事。

 そして成仏の方法。
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