気付いたらゴーストでした。
 駿くんは眉を潜めて、やはり首を傾げる。

『なんで自分がだれか分からないの?』

『え…』

『じょうぶつってさがすものじゃないよ? おむかえが来るんだから」

 え。

 それは、一体?

『て言うか。オモイノイト付いてるじゃん?』

『……は?』

『背中』

 駿くんの言ってる事がいまいち理解できなくて、僕は自分の背中を見ようとする。

 変わらずに白い糸が見える。

『この白い糸の事?』

『そうだよ。"想いの糸"。ぼくも少しのあいだだけ、お母さんとつながってた』

 想いの糸……。

『え、今は?』

『今はもうないよ。もうじき天国に行くから』

 そう言って駿くんは無邪気に笑う。

 けれども、その笑顔もやがては萎み、彼は心配そうな瞳で母親を見つめた。

 母親を残して逝くのが、心残りなのだろう。

 駿くんの気持ちに同情を寄せるものの、僕はさっき聞いた言葉について考えを巡らせた。

 何で駿くんにはもう糸がないんだろう?

 天国に逝くから?

 少しの間って。どれぐらいお母さんと繋がっていたんだろう?

 分からない事だらけだ。

 て言うか、天国って本当にあるんだな……。
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