気付いたらゴーストでした。
 恋愛で傷付いたせいか、彼女の食欲は人並みで、ガツガツとがっついて食べる事はなかった。

 ただぼうっとテレビを見つめながら、思い出す程度に箸を動かしている。

 そんな彼女を見つめ、胸の奥がズキズキと傷む気配がした。

 心臓のあった所がキュウッと締め付けられるみたいで、眉間をしかめる。

 花純さん。本当に好きだったんだ……。

 どこの誰かも分からない高校生に、そこまでのエネルギーを傾ける彼女を想い、僕の方こそ傷付いていた。

 幽霊で子供の僕が、ひと回りも歳が離れたお姉さんに恋をするなんて馬鹿げてる。

 冷静になればそう思うのに、花純さんと一緒に過ごすこの部屋(くうかん)では、彼女は僕だけに笑いかけてくれる。

 僕だけが()の彼女を独り占めしている。

 そこに微かな喜びを見出すのものの、この想いには決定的な敗因がある。

 僕はすでに死んでいるんだ。

「ねぇ、こういうのはできないの?」

 不意に花純さんに尋ねられ、ハッと顔を上げる。

 花純さんは観ている映画を巻き戻しして、僕に見せたいシーンへ合わせた。

 僕は映像を観て、困って眉を下げた。

 映画のワンシーンはこうだ。
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