気付いたらゴーストでした。
「やっぱり。ちょうど俺らも見舞いで行ってて……飲み物を買ってる時にお姉さんを見かけた気がしたもんで」

「……そうなんですね」

 あの時か、と不意に思い当たる。

 あの日。病院を出る間際に、花純さんは若い男女数名を見て、振り返っていた。

 その中の一人、まさしく今そこにいる男子を花純さんは見ていた。

 僕が見えない彼は、花純さんが一人きりで歩いているのを見て、記憶に留めたのかもしれない。

 男子高校生は、花束を仲間うちの一人に手渡して、「今ちょっといいですか?」と花純さんに話しかけた。

 プライベートな話をするつもりだと瞬時に察知する。

 それまでは店員とお客さんの立場で話していたのだが、彼らの距離が急に近くなった気がして、少なからずムッとなる。

 なんだ、コイツ。もしかして花純さん狙いか?

 店員の彼女は、天使とか女神そのものなので、モテるのは理解できる。

 すぐにでも告白されそうな雰囲気を見て、胸がざわついた。

「まぁ、少しだけなら。大丈夫、です」

 花純さんは若干、不安そうに彼を見て、眉を寄せた。

 男子高校生は意を決した様子で口を開いた。
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