気付いたらゴーストでした。
「俺、開聖高校に通う篠原(しのはら)っていうんですけど……」

「はい」

「毎週水曜日に、ここで一輪のバラを買ってたやつ……、覚えてますか?」

 その瞬間、花純さんがビクッと肩を震わせた。

「そいつ、俺の親友でレンって言うんですけど。先々週の水曜日……事故に遭って」

 たちまち花純さんの表情が暗くなる。

「お、覚えてます。彼のお友達の、あなたの事も」

「……あ、そうなんですか」

「それで……。彼はっ、いま……?」

 今どうしているのか?

 それが聞きたいらしい彼女の声は、不自然に震えている。

 水曜日限定の"赤いバラの王子さま"を想い、彼女は心配から泣きそうな顔をしていた。

 篠原と名乗った高校生は曖昧に首を振る。

「あれからずっと、眠ったままで。まだ意識が戻らないんです」

「……そんな…っ、」

 花純さんは悲愴な顔つきで口元に手を当てた。

「だから今日も。みんなでレンのところにって…」

 花純さんは俯き、肩を落とした。

 色々とショックで動揺が隠し切れていないのだ。

「あの……、お姉さん。近いうちにレンの見舞いに行って貰えませんか?」

 ……え。

「え?」
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