気付いたらゴーストでした。
 何で花純さんに?

 篠原は躊躇いながらも、続きを口にする。

「俺から言うのも何なんですけど…。レンがいつもバラを買ってたのは、お姉さんに対するアピールだったんです」

「……え」

「あいつ、不器用だけど。ロマンチストなやつで。一輪のバラの花言葉を毎週お姉さんに贈ってたんです」

「花、言葉…?」

 そこで篠原は恥ずかしそうに頬をかいた。

「はい。レンが言うには……"ひとめぼれ"とか、"あなたしかいない"……だったかな?」

 不意に花純さんがドキッとするのが見て取れた。

 瞳を大きく見開き、唇を震わせる。

 彼女が想いを馳せてやまない王子さまを思い、花純さんはグッと胸に手を当てた。

 心を打たれずには、いられないのだろう。

「あの、だから……、レンの見舞いに行って貰えませんか? お姉さんが来てくれたら、あいつ、目ぇ覚ましそうな気がして」

 そう言いつつも、篠原の声が震えているのに気が付いた。

 彼も親友の意識が戻るのを、切に願っているのだろう。

「っ分かりました、行きます」

 花純さんがそう言って頷くと、篠原は「良かった」と言って頬を緩めた。
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