気付いたらゴーストでした。
「私……っ。ホントに、すごくすごく…っ、王子さま(あのひと)のことがっ、好きなのっ」

 花純さんは肩を震わせ、さめざめと泣いていた。

「王子さまが死んじゃったら……っ、ど、どうしよう……っ、うぅっ、どうし、よ、ゴウく…っ、」

 時々、嗚咽をもらしながら、"赤いバラの王子さま"を想い、泣いていた。

『無事に意識を取り戻してもらえるように……祈るしかないですよね』

 僕は彼女のそばに座り、慰めの言葉をかけた。

 彼女は真っ赤な目と頬で顔をくしゃくしゃにし、僕に「ありがとう」と言った。

 彼女が別の異性を想い、泣いている姿を見るのは、痛く悲しい。

 辛そうにする花純さんを見たくないのに、ただ見つめてしまう。

 どうにもやり切れない。

 もう死んでいるけれど。

 死にたいほどに、辛く悲しい夜だった。

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