気付いたらゴーストでした。
肉体があったなら、背中にツツ、と汗が滲んだに違いない。
僕は思い切って気配のする方向、右手後方へと振り返った。
その姿を見て、目を丸くし、あんぐりと口をあける。
《……お帰り? 蓮くん》
そこには天使がいた。
真っ暗闇に満たされたガラス窓を背景に、真っ白に輝く天使が立っていた。
コントラストの効果で、まばゆい光に、一瞬目をしかめる。
《一時はどうなるかと思ったけど……ちゃんと帰って来てくれて安心したよ。おかげで"想いの糸"も切れた》
想いの糸が……?
彼の言葉を受け、試しに背中後方を見れる範囲で振り返ってみるが。
あの白い糸はもうどこにも存在しなかった。
本当に、切れたのか?
僕は駿くんから聞いた言葉を思い返していた。
ーー『気付いたら糸が切れてて。そのあと天使のお兄さんがパァッてあらわれたの』
想いの糸が切れて、天使が出現した。
この彼は駿くんから聞いた"天使のお兄さん"に違いない。
『天使、ですか? 俺を迎えに……来たんですか?』
天使の彼は《うーん?》と言って、首を傾げる。
僕はまじまじとその天使を観察した。
白い肌に白銀の髪、青紫の瞳で、上下揃いの白いスーツを着ている。