気付いたらゴーストでした。
大きな真っ白い羽を背中に生やしてはいるが、頭上に輪っかは乗っけていない。
《キミの記憶はまだ曖昧なんだね〜。説明とか正直面倒なんだけど……した方が良いよね?》
僕は少し考えてから躊躇いがちに頷いた。
何だろう、なんだか気の抜ける話口調だ。
《しょうがないなぁ。ボク、キミの担当じゃ無いんだけどなぁ〜……まぁ、迷子を保護した責任もあるし、仕方ないかぁ》
天使は腕を組んだままブツブツと独りごち、僕を気怠げに見つめた。
《あのねぇ……。キミはまだ完全に思い出せてないと思うけど、市ヶ谷 蓮くんっていうの。
そこで眠ってる高校生ね。
霊体の姿を確認できないのが残念だけど、もう子供の姿じゃないから》
『……えっ』
そう言われて、初めて自分の手足を確認した。
確かに、子供の手足ではなくなっている。
《キミが事故に遭った夜、ボクは偶然、迷子の魂を見つけちゃったの。
パトロール中の事だったんだけどさ、どうにも見過ごせなくて。
あ、ちなみに魂って丸い炎みたいなやつね? 人間の姿じゃないから》
そうなんだ……。
て言うか、その情報いるのか?
《……で。魂の所在を調べたら、市ヶ谷 蓮くんって分かったから一応死亡者リストも確認したのね?
でも蓮くんの名前は載ってなかった。
だから、ああ、幽体離脱しちゃったわけねって思って。
キミの体のある場所を特定して連れて帰ろうとしたの》