気付いたらゴーストでした。


 お姉さんは一息に言って、ハァと肩で息をついた。

 僕はやはり思ってしまう。よく喋る人だなぁ、と。

『……すみません』

 お姉さんは混乱しているようなので、先ずは自分の事を伝えようと思った。

『オレもよく分からないんです。
 分かってるのは、交通事故で死んだ事と、気付いたらお姉さんの部屋にいたという事ぐらいで……実は自分がどこの誰かも覚えていません』

「……え」

 お姉さんは、ピキッと表情を固めた。

「キミ、自分が誰か分からないの? 名前も?」

『はい。オレは……どこかに行く途中でした。
 横断歩道を走ってて、急に突っ込んできた車とぶつかって……。
 多分そのまま死んで、この部屋に立っていました』

 お姉さんは後ろ手をついてそろりと立ち上がり、さっきまで座っていたであろうコタツテーブルを前に座り直した。

 そして僕を見て、おいで、と手招きしてくれる。

 迷いはあったが、僕はふわふわと軽い足を出し、お姉さんのすぐそばに座った。

「幽霊って足が無いものだと思ってたけど、実際はあるのね?」
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