気付いたらゴーストでした。

『俺と糸で繋がれた花純さんには、俺の姿が見えるようになるけど。俺自身は霊体であっても天使が見えなくなる、そういう事ですか？』

《……まぁ。そうだね？》

　＂想いの糸＂にはそういう作用があるのか……。

『あの、ちなみに。糸が切れる要因って……？』

《……寿命が尽きた時、すなわち死んだ時だね。
けどキミのは例外で、生きてる魂なら元の体に近付いた時、かな》

　なるほど。

　天使の言葉を聞いていて、何となく自分なりの解釈を見いだした。

　発想の転換、と胸中で呟く。

　目の前の天使が言うように、僕がこの市ヶ谷 蓮だとしたら＂想いの糸＂については説明がつく。

　発想の転換。

　引っ張られるもの→とりもち、ロープ、強い意志。

　離れられないもの→首輪、拘束、強い意志。

　僕と彼女の絆→結びつき、お互いの想い、強い意志。

　都合のいい解釈かもしれないが、僕と彼女を結びつけていたのは、互いに発せられる強い意志だ。

　事故に遭ったあの夜。

　花純さんの意識は、＂赤いバラの王子さま＂を強く想っていた。

　一方僕は、花屋で働く彼女に想いを伝えたいという強い意志を持ったまま、意識を失った。

　彼女が言うところの、心残りだ。

　死にはしなかったものの、一時、体から離れてしまった僕の魂は花純さんの強い想いとガッチリ結び付いてしまった、そういう事だろう。

　行った事もないマンションまで浮遊したのだって、彼女の強い想いが、僕の魂を呼び寄せた結果かもしれない。

　それでも、説明のつかない事は二、三ある。

　なぜ僕の霊体(からだ)は子供の姿だったのだろう？

　花純さんと市立病院に行こうと決めた時に感じた、あの説明のつかない胸の痛みは？