気付いたらゴーストでした。
「いや、違くて。この間の模試の結果見て歩いてたら、用紙が風で飛ばされて。それで焦って取りに走ったら」

「拾ってくれたわけだ? そのお姉さんが」

「まぁ、そうだな」

 蓮が一目惚れねぇ〜、と呟く樹は始終にやにやしている。

「それでなに? ただ見てるだけ?」

「………いや。先週の水曜日から赤いバラを一本ずつ買ってる」

「は? バラ?」

「そう、バラ」

 樹が無言になるので、僕も口を閉ざす。

「え、毎日バラ買ってんの?」

「いや、毎日じゃなくて。毎週にしようと思って。一昨日も買った」

「え〜……っと。それ何か意味あんの?」

「少なくとも、インパクトはあるだろ? 高校生が毎週水曜日に赤いバラ一本って、なんかミステリアスじゃない?」

「ほうほう、言われてみればそうだな。でも、それには欠点が一つある」

「なんだよ?」

「バラって、恋愛的なイメージが強いだろ?」

「それは分かってる。だからバラ一本の花言葉にちなんで買ってるんだし」

「花言葉って」と呆れ顔で肩をすくめ、樹は嘆息する。バラ一本の花言葉である『一目惚れ』や『あなたしかいない』という意味を伝えても、反応は同じだった。

「そもそも花って誰かに贈るために買うものだろ? まぁ自分のために買う人もいるけど、多数派は贈答品だ」

「………。そうだな」

「て事はだ? あのお姉さんは熱心に週一で買いに来る蓮を覚えてはくれるけど、他の誰か、つまり彼女なんかに贈ってるんだろうって勘違いするぞ?」

「……うっ」
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