気付いたらゴーストでした。
 連休中、彼氏とデートするお姉さんをつい思い描いてしまい、キリキリと胃がいたくなる。

 ここのところ、よく考えてしまうのだ。

 あんなに可愛いお姉さんなんだから、彼氏ぐらいいるんじゃないかって。

 自分の気持ちに一生懸命になり過ぎて、今まではその至極単純な構図が思いつかなかった。

 既に彼氏がいる人なら、たとえ僕の事を覚えてくれていたとしても、熱心な高校生で終わってしまう。

 このバラはあなたのためです、と想いを告げたりなんかしたら、電波な奴だとドン引きされるかもしれない。

 とにかく、ほとんど勝算なんて無い。

 お姉さんがフリーでいる事を願うのみ、だが……。

 再び歩き出し、僕は花屋が見える距離へと差し掛かった。

「うわぁーいっ! お姉ちゃん、ありがと〜っ!」

 店先でピョコピョコ飛び跳ねる少年のそばに、お姉さんの姿が見えた。

 今日も髪を二つ結びにくくり、可愛らしい笑みを浮かべている。

 赤いエプロンが本当によく似合っている。

「どういたしまして〜っ、ちゃんと落とさずに持って帰るんだよー? お母さんいつもありがとうって渡したら、きっと喜んでくれるねっ」

「うんっ!」

 お姉さんは少年の目線に合わせて(かが)み、うふふと幸せそうに笑っていた。

 少年は「バイバーイ」と言って、彼女に手を振っていた。小学一年生ぐらいの男の子だ。
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