気付いたらゴーストでした。
 僕が目覚めた今日が、六月十一日と聞かされ、事故から半月経っているという事実にはさすがに度肝を抜かれた。

 それからは看護師さんが、僕の右手人差し指に付けた酸素数値を計る機械を確認したり、血圧や体温も計ってくれた。

 顔に付けた酸素マスクも必要なしと判断されて、それらの器具も全て回収し、瀧先生と看護師さんは一礼をして去って行く。

 格好のつかないマスクが外された事に安堵し、僕は部屋の隅に立つ彼女をチラ見する。

 彼女はショルダーバッグの紐を握り締め、遠慮がちに俯いていた。

 母さんが久しぶりに目を覚ました僕を見て、事故のあらましを簡単に説明してくれる。

 僕がトラックに撥ねられた時。

 運転手は慌ててブレーキペダルを踏み込み、トラックがある程度減速していたため、幸い脳にはそれほどのダメージがなかったらしい。

 所々打撲や骨折、挫創はあったものの、瀧先生からは軽い脳しんとうと判断され、意識が回復するのは時間の問題だと言われたそうだ。

 しかしながら、待てど暮らせど、僕の意識が中々戻らないので、瀧先生をはじめ、家族や友人にはかなりの心配をかけてしまった。

「篠原くんたちも何度もお見舞いに来てくれてね、蓮の事心配してたのよ?」

「……。そっか」

「蓮が目覚めた事、母さんから篠原くんに伝えておくわね?」

「……うん」

 て言うか。樹の連絡先、聞いてたんだな……。
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