気付いたらゴーストでした。
「蓮くんのお友達の、篠原くんが花屋さんに来てくれて……。
 お見舞いのお花を買うついでに。蓮くんの事を教えてくれたの」

「そ、そうだったんですか」

 やっぱり。

「お見舞いに行く事もお願いされて……。だから、図々しくも来てしまいました」

「えっ? いや、そんな……」

 て言うか、樹、そんな事までお願いしたの? グッジョブすぎるだろ!

「篠原くんから、二週間も意識が戻らない事きいてたから。私、蓮くんがそのままだったらどうしようってすごく怖くなって……っ、でも。
 ちゃんと目覚めてくれて……いま、すごく嬉しいの…っ」

 あっ、……え?

 お姉さんは声を震わせて、しまいにはシクシクと泣き出してしまった。

 うわ、どうしよ、これ。俺、なんて言えばいい??

「な、泣いちゃってごめんなさい」

 そう言って鞄からハンカチを取り出し、彼女は慌てて目頭を押さえている。

「……っあ、あの!」

 泣き出す彼女に狼狽(うろたえ)るものの、僕は彼女に何か言うべきだと思った。

 彼女は潤んだ瞳で僕を見つめ、首を傾げる。

「……な、名前! 聞いてもいいですか?」

「あ……っ、はい。和倉 花純、です。和むに倉庫の倉、かすみは花に純粋の純って書きます」

 和倉、花純さん。

 花純さんか。

 知りたかった名前が聞けて、喜びに打ち震えるのだが。

 なぜかその時、妙な既視感を覚えた。

 ーー「私は和倉 花純、ハタチの専門学生」

 あれ……? なんだ、コレ。

 いつの記憶だ? 夢か……?
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