気付いたらゴーストでした。
「えっ…!」
急所を突いてしまったのか、お姉さんは瞬時に顔を赤らめ、しどろもどろになった。
「の、飲んでたけどっ! 別に、そんなに……っ。よ、酔ってないわよ??」
え。
ああ……なるほど。
酔っ払いの戯れ言として受け止められた、そう思ったわけだ。
『いつもこんなに飲むんですか?』
誤解されたままだけど、特別言い換える事もなく、僕は質問を重ねた。
「ち、違うわよ! 今日は特別。
嫌な事があって、凹んでたから……ついヤケ酒しちゃったの」
『失恋ですか?』
お姉さんは、う、と顔を歪めた。
「別に。そんなんじゃない、って言うか。キミ子供だと思ってズケズケと聞きすぎじゃない?」
『……はぁ。すみません』
しおらしく謝ると、お姉さんはそれ以上何も言えないのか、グッと唇を引き結んだ。
「とにかく。……失恋なんかじゃないわ。
ただ……好きな人がお店に来なかったから、凹んでただけで」
『……お店』
気になる単語を拾って呟くと、お姉さんは嘆息し、詳細を話してくれた。
「私、週二でバイトしてるんだけどね、って。バイトって分かる?」
『正社員ではないアルバイトの事ですか?』