気付いたらゴーストでした。
Re.1日目.(2)やっとさわれる
僕がもらした呟きに、ことさら反応を見せたのは花純さんだった。
「へ……? いま、なんて?」
彼女は肩を震わせて、耳まで赤く染めている。
「ああ、ごめんなさい。何となく……赤いバラの王子さまって単語が耳に馴染んでいたような気がして……」
花純さんは膝の上に置いた鞄をぎゅっと握りながら、消え入りそうな声で「なんで?」ともらした。
「私、その呼び名は……学校の友達にしか言ってない、のに……、」
そこで彼女はハッとなった顔を上げ、怪訝に眉を潜めた。
無言で唇をキュッと結び、キョロキョロと忙しなく瞳を泳がせる。
「おかしい……」
「え?」
「何でなんだろ……?」
「あの……、花純さん?」
今度は彼女の瞳が僕の顔をジッと見て、不安定に揺らいだ。
「私、多分、今から変な事言います……」
「はい……」
「実は今朝起きた時から……ずっと変な違和感を感じてて」
「……違和感?」
「あ、いえ。違和感というより……何か大切な事を忘れてしまったような気がしてて」
彼女が何を言わんとしているのか分からず、僕は真剣に耳を傾けた。