気付いたらゴーストでした。
「……そ、そう。よく知ってるね?
アルバイトとしてお花屋さんで働いてるんだけどね、毎週水曜日に来るはずの……"赤いバラの王子さま"が来なかったのよ」
花屋。水曜日。赤いバラ。
お姉さんの言葉を単語として拾い上げ、僕は尋ねた。
『赤いバラの王子さまって何ですか? 何かのグループですか?』
「ああ、違う違う。来店するたびに毎回バラを一輪だけ買ってくから、そう呼んでるだけ。
開聖高校の制服を着た男の子なんだけどね、すっごくカッコいいの」
『……高校生』
またポソっと呟くと、お姉さんは「なによぉ」と言ってむくれた。
「こう見えても、私はまだ二十歳だから、彼とは多分……。三つぐらいしか違わないのよ?」
別に歳の差がどうこうという話をした訳では無いのだが、お姉さんはハタチなのかと思った。
『お姉さんの名前、聞いてもいいですか?』
「え、ああ、うん。私は 和倉 花純、ハタチの専門学生。
キミは……って聞きたいとこだけど、覚えてないのよね?」
僕は仕方なく首肯する。