浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~
急に忘れたのか?と言われても困ってしまう。
もしかして記憶を無くした時に知り合った人物か?
それに神崎……?
神崎と言えば。
俺は、伊波君の言葉を思い出してしまった。
まさか……あのオーナーか?
すると周りの女子生徒達が騒ぎだしてしまう。
「えっ?何……修羅場?もしかして
神崎先生と立花先生って知り合いなの?」
そ、それは……。
俺は、どう説明したらいいか戸惑っていると
神崎先生は、ニコッと微笑んできた。
「あ、すまない。人違いだった……あまりにも
知り合いに似ていたから思わず声をかけてしまった」
「えっ?そうなの?何だ~」
「本当に申し訳ない。じゃあ……俺は、これで。
君達も早く教室に戻るんだぞ」
その神崎先生は、謝罪をすると何も無かったかのように
俺の横を通り過ぎて行ってしまった。
人違い……?いや……違う。確かに俺の苗字を言ったし
記憶がない時の自分を知っているようだった。
俺は、慌てて後ろを振り返った。
すでに行ってしまった後だったが……。
もし彼があのオーナーだったのなら。何故ここに?
探偵でもあったと聞いていたけど……。
何故だろうか?思い出せないのに気持ちがモヤモヤして
どうしようもない不安を抱いた。
怖さよりも……悲しさと一緒に。
「先生……どうしたの?」
「あの先生って名前なんて言うの?」
「うん?あ、あぁ……神崎桃哉先生。
養護教諭の先生だよ。えっ?やっぱり知り合い?」
「いや……別に」
その勘が当たっていた。やっぱり彼がオーナーだ!
ここに居るのは偶然か?いや……彼は、養護教諭じゃない。
探偵だし、喫茶店のオーナーだったはず。
じゃあ何故?この学校に?
もしかして俺を捜し出すために?