浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~
確かに鏡で見た時は、これが俺?だとは思った。
しかし背が168cmで女性だと長身だ。
こんな姿で本当に大丈夫なのだろうか?
神崎さん的には、「あくまでも男性経験が少なく
騙されやすそうな女性がターゲットにされやすい。
下手に上手く演じようとしなくてもいいから
言われた通りにやれ」と言われてしまったが。
下手に上手くやろうとしなくてもいいって
それってかえって難しい気がする……。
大根演技なんかしてみろ……すぐにはバレてしまう。
あくまでも女性として振る舞わないと。
俺は、緊張しながら会場に入っていく。
たくさんの男女がパーティーのように集まり
楽しそうに会話をしていた。うわぁ……凄いな。
婚活パーティーなんて初めてだから
何をどうしたらいいのか分からないけど
とりあえず岡原慶一を捜さないと。
あ、居た。居た。何も無かったように涼しそうな表情で
ワインを飲みながら女性と話をしていた。
確かにイケメンだが、あんなに詐欺なことをして
女性を騙したというのによく平気な顔をして楽しめるな?
許せないと思ったし、ギャフンと言わせたいとも思った。
とりあえず言われた通りに近づかないと……。
俺は、深呼吸をすると岡原に近づいで行く。
そしてニコッと笑顔で話しかけてみた。
「あの…少しお話をしませんか?」
「あぁ、いいよ。君、名前は?」
「あ、藍沢加奈子です」
「藍沢…加奈子さん? いい名前ですね
それにスタイルもいい……モデルさんですか?」
「いえ……父の会社を手伝ってます」
俺は、謙虚気味に答えると
岡本慶一は、疑いもなくニコッと微笑んできた。
どうやら反応を示したようだ。
少し離れた場所で話すことにした。
今回の偽名は、佐々木慶一と名乗っていた。
いくつ名前を使い分けているのだろうか?
俺は、疑問に思いながらも設定の会社の事をそれとなく
話すとさらに食いついてきた。
「君のお父様。凄い人なんですねぇ~。
藍沢製薬会社だなんて、大手じゃないですか」
「そんな大それた会社じゃないんですよ。
小さな会社で…恥ずかしいわ」