浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~

「アハハッ…謙虚な人だな。
俺こそまだまだ半人前なんですよ?」

 そう言いながら笑っていた。
どうやら疑っていないようだ。よし。
 さらに深く探って情報を聞き出さないと……。
そういえば被害者に遭った人の情報だと
職業も毎回違うのを名乗っているらしい。
 なら今回は、一体どんな職業にする気なのだろうか?
俺は、警戒をしながら質問をしてみることにした。

「まぁ、何の仕事をなさっているのですか?」

「刑事です。まだ半人前なんですけど…」

はぁっ?思わない職業を言われて驚いてしまった。
 よりにもよって刑事だと言ってくるとは。正気か?
さすがに無理があると思うが……。
 俺は、必死に疑われないように笑顔を装った。

「まぁ…勇敢で素敵なお仕事だわ。
私、刑事とかそういうお仕事に憧れているんです」

「そうなんですか?」

「えぇ刑事ドラマとか、かかさず観ています。
 あの…もしかして警察手帳や拳銃とか
持っていたりするんですか?」

ま、まさか……いくら何でも警察手帳とか
持っている訳がないよね?
 だが佐々木慶一は、ニコッと笑ってきた。

「あぁ、持っているよ!
さすがに拳銃は、普段持ち歩かないけど」

「そ、そうなんですか?ぜひ見てみたいわ」

いやいや。口だけに決まっている。いくらなんでも
 落ち着け……落ち着くんだ。俺は……。
俺は、動揺しながらも警戒をしていると
佐々木慶一は、ふぅ…とため息を吐いてきた。

「仕方がないな。必要以外は、一般人に
見せたらダメなんだけど…秘密だよ?」

 ウィンクしながら上着のポケットから
警察手帳を取り出して堂々と見せてきた。
 こ、これは……本物なのだろうか?
見た感じは、以前瀬戸さんが見せた手帳と同じものだったが。

「これで信用してくれたかな?」

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