浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~

「はい。あまりにも素敵だったので
見惚れてしまいました。ありがとうございます」

 自信満々に言う佐々木慶一に俺は、笑顔が
引き攣りそうになるが、何とか堪えた。

しかし、ますますこの男に警戒をしないといけない。
 どうやって入手したのか分からないし
刑事だと名乗ったのにも何を企んでいるのか分からない。

「もっと佐々木様とお話をしてみたいわ。
アドレス教えて頂けませんか?」

 俺は、わざとそう言うと佐々木慶一とメールの
アドレスの交換をしないかと持ちかけた。
 電話だとテレビ電話にされた際に
女装だとバレてしまうから、あくまでもアドレスで。
 神崎さんの指示で、別のPCウォッチを用意してもらっていた。

無事にアドレスを登録する。よし。
 これで繋がりが出来た。俺は、パーティーを終わらせると
そのまま神崎さんの居る喫茶店に足を運んだ。
 神崎さんには、無事にアドレスを交換することが
出来たと報告する。

「よし。このまま連絡をやり取りして何度か
会うチャンスを作れ。その内に自分から理由をつけて
金をせびるはずだ」

「はい。でも……また女装するの嫌だなぁ……」

 何度も会うたびに女装をしないといけないなんて憂鬱だ。
思わず言いながらため息を吐いた。
 あんなの一度きりでいいのに……。

「心配しなくても上手くやっているぞ。
それになかなか似合っている……」

「全然嬉しくないですよ……似合っているなんて」

 神崎さんは、他人事だからそう言うが、男として
何かプライドが傷ついてしまう。
 俺は、もう一度ため息を吐きながら淹れてもらった
キャラメルラテを口につけようとする。
 すると神崎さんは、何か考え込みながらニヤリと笑ってきた。

「しかし今度は、刑事と言ってくるとはな。
逆に使えるかもしれないぞ」

「えっ……?」

 何だかまた嫌な予感がする。
俺は、言われる前に帰ろうと慌てて飲んだ。

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