浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~
その後。神崎さんが頼んでくれたカリスマ美容師に
髪とメイクをやってもらった。
そして待ち合わせした六本木にあるバーに向かった。
薄暗めで落ち着いたバー。
お洒落な感じから料金も高そうだ。
まだ薄暗いから誤魔化しが利きそうだが……。
「また藍沢さんに会えるなんて嬉しいです。
誘いを受け入れてくれてありがとうございます」
「こ、こちらこそありがとうございます。
まさかメールを下さるなんて思わなかったから
とても嬉しかったです。素敵な方だったから私なんて
相手にされないと思っていて……」
「そんな……相手しない訳がないですよ!
俺こそ……初めての参加で、こんな素敵な女性と
知り合えるなんて夢のようだ」
照れたように頬を赤らめる佐々木慶一を見て俺は、
唖然とした。嘘をつけよ……嘘を。
あれだけ結婚詐欺をしておいて初めて参加とか
どうにかしている。
いや……待てよ。それが手か。
自分は、恋愛に不慣れだと相手に思わせて
本気にさせる気だ。そうに違いない。だとしたら
なんて最低な野郎だろうか。許せないと思った。
しかし顔に出したらバレる。
それにあの作戦も実行しないといけない。
我慢だ……俺。自分を必死に言い聞かした。
よし。あの作戦だ!えっと……落ち着け。
深く深呼吸をすると佐々木慶一に
「まぁ……嬉しいわ。私もなんです。
どうも男性とか苦手意識があって。前も……。
いえ……今も嫌な思いをしたことがあるんです……」と
打ち明けた。
「えっ?どういうことですか……?」
「……聞いて頂けますか?佐々木さん……」
俺は、目をウルウルさせながら佐々木慶一を見た。
自分でもよくやるなぁ……と思った。しかし
思ったより効果があったのか食いついてきた。
「もちろんです。俺に出来ることなら
協力させて下さい!!」