浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~
「実は……最近ストーカーに悩まされているんです。
犯人は、元カレで……以前お付き合いした時は、
異状な嫉妬に悩まされていて。
それから別れても未だにしつこく電話してきたり
尾行してきて……」
佐々木慶一にわざと嘘の情報を流した。
警察と名乗っているのなら、見過ごす訳にはいかない。
それに上手くやれば謝礼金ぐらいは貰えると思うはずだ。
「こんなこと……刑事でもある佐々木さんしか
相談が出来なくて。
両親にも心配かけたくないし。お願いです。
私を守って下さい。お礼ならします!
両親も娘のピンチを救ったとなると感謝して
結婚資金とかお礼金をたくさん出してくれるはずです」
あえてお金をチラつかせる。
詐欺師ならお金を貰える話に飛び付くはずだ。
しかもお礼金なら、なおさら……。
すると佐々木慶一は、何を思ったか
俺をギュッと抱き締めてきた。えっ?
「相沢さん。いや、加奈子さんと呼ばせて下さい。
こんな辛い想いをなさっていたなんて……。
俺に任せて下さい。俺が絶対あなたを守ってみせますから」
「まぁ……嬉しい」
やめろ。男に抱き締められるなんて気持ちが悪い。
あまりの気持ち悪さにゾゾッと鳥肌が立った。しかし
どうやら俺の言った嘘を信じたようだ。
まぁこの男にしたら真相なんてどうでもいいのだろう。
お金が騙し取れれば……。
とりあえず上手く行った。帰りに送ると言われたが
女友達が泊まる約束をしているからと言い断った。
あんなボロアパートを教える訳にはいかないし
正体がバレたら大変だ。だが食い下がらない佐々木。
あんまり断ると怪しまれるか?
じゃあ……駅までと言い何とか納得してもらう。
そこで別れればいいか。
バーの会計を済ませると一緒に駅まで歩いた。
六本木も賑わいが夜になるとネオンが輝かせ
大人の雰囲気を漂わせる。外国人やお酒を飲んだ
おじさん達も歩いていた。
あぁ早く帰りたい……そう思っていると佐々木慶一が
私に、こっそり
「あの人じゃないですか?さっきから
俺達の周りをうろついている」
「えっ……?」
俺は、驚きながら言われた方を見る。
すると人混みに紛れて瀬戸さんが居た。
マスクをして帽子を被っているが姿で分かった。
えっ?でも……何で瀬戸さんが!?
何で?と思ったがハッとする。
もしかして神崎さんが仕掛けたことじゃないかと。
変な奴が俺の周りにうろついていた信憑性がある。
話を信じてもらいやすいだろう。