浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~

『丁度いいから泊まらせてもらってこい』と
書かれていた。って……おい!!

 神崎さんの言葉に俺は、唖然とする。
泊まらせて来いって……俺を見捨てる気ですか!?
 結婚詐欺の上にそんな部屋に一夜を過ごすなんて
俺の身の方が危ないじゃないか。
 もし俺の招待がバレたら何をされるか分からないぞ?
命の危険だって……。

 あ、でもそれを知っているってことは、何処かで
俺らの話を聞いているってことか?
 いや。それでも……危険過ぎる。

「加奈子さん?どうかなさいました?」

「あ、いえ。友達が今日は、ダメになったって
 なら、お邪魔させてもらおうかしら……フフッ」

 ちょっ……何を言っているんだ!?自分。
咄嗟だとはいえお邪魔するとか言っている自分に
驚いてしまった。もう頭の中がパニックなってしまう。
 しかし佐々木慶一は、やり気満々だった。
断るとしつこそうだ……。

仕方がなく俺は、佐々木慶一の自宅について行くことに。
 もう……どうにでもなれ!!
半分やけくそになりながら向かった。

彼の自宅は、少し古いが二階建ての一軒家だった。
 意外だ……マンションを案内されると思ったのだが。

「実は、母と2人で住んでいたんだ。
 今は、母が病で長く入院しているから
1人で住んでいるようなものだけど……」

「まぁ……お母さん病気で?」

まさか、こんなところで母子家庭設定を
入れて来るなんて思わなかったから驚いた。
 すると佐々木慶一は、フッと寂しそうに笑う。

「あぁ……悪性な癌だって。長くないと言われてる。
 まぁいい治療法が見つかり手術をすれば
全て取り除けると言われていたけど……高額でね。
 俺を苦労して刑事にさせてくれたから
どうにかしてあげたいけど……あ、ごめん。
 辛気臭い話をして。あがって。
コーヒーでいいかな?今淹れるから適当に座ってて」

「あ、私が淹れます!
 お邪魔させてもらったのに何もしないなんていけないわ」

俺は、慌ててコーヒーを代わりに淹れると言った。
 もしコーヒーに何かを盛られたらダメだし……。

「そんな悪いなぁ……お客様なのに」

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