浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~
その後。俺は、神崎さんと一緒に関東スタジオに向かった。
そこで辻エレナは、モデルの仕事をするらしい。
で、俺の与えられた任務は……。
「あら~なかなか可愛い男の子じゃないのよ。
さすが神崎ちゃんの選んだ子なだけはあるわね」
「た……立花駆です……」
ヘヤーメイクのアシスタントだった。
神崎さんのコネとは、ヘヤーメイクのリカコさんだ。
ただし大柄なおネエなんだけど……。
リカコさんは、浅草駅の近くで美容室を経営しているのだが
その世界では、有名らしくたまにヘヤーメイクとして
芸能界からも呼び出しが来るらしい。
凄いとは思う。思うのだが……。
「まぁ照れちゃって。可愛いわ~食べちゃいたいぐらい」
そう言いながら投げキスをしてきた。
ゾゾッと背筋が凍ったような感覚がした。怖い……。
すると神崎さんは、苦笑いした。
「リカコさん。あまり立花を困らさないでくれよ?
それよりも上手く潜らせてくれてありがとう」
「あら困らせてないわよ?失礼しちゃう。
フフッ……神崎ちゃんの頼みだもの。断れないわよ。
それに実物の立花ちゃんにも会ってみたかったし。
なるほどね。何となく伊波ちゃんに似てるわね」
えっ……伊波さん!?
その言葉に一瞬心臓がドキッと高鳴った。
リカコさんは、伊波さんを知っているのか?
「そんなことより……そろそろ行くぞ。
撮影前に辻エレナさんとマネージャーの伊藤さんに
会っておきたいから」
「フフッ……そうね。私も仕事しなくちゃあ」
話を遮るように神崎さんがそう言ってきた。
思い出したくないのか話を逸らされたように気がした。
やっぱり今も思い出したくないのかなぁ……?
俺が伊波さんの弟と会っていると知ったら
どんな反応をするのだろうか?
そう考えるとまた罪悪感を抱いた。