浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~
「ま、まさか……君が赤羽なのか?」
その勝ち誇った表情は、あの二階堂ユミカの
誘拐事件で見たキツネのお面の男に似ていた。
そうなると赤薔薇会のボス・赤羽ってことになる。
まさか……伊波君が!?
「フフッ……そう。僕が赤羽だ。
そして赤薔薇会の当主でもある」
そ、そんな……!?じゃあ俺は、騙されていたのか。
彼を信じて神崎さんにも言わなかった。
相談だってしたのに……。
騙された自分と気づけなかった自分に悔しさと
ショックが大きかった。
だが赤羽は、クスクスと笑っていた。
「でも、こんなに騙されてくれるなんて
随分とからかいがいがあって面白かったよ。
でも君も神崎君も詰めが甘い。
君を1人にさせておくなんて……まぁそうさせたのも
僕なんだけどさ。今頃神崎君は、平山巧の行き先を追って
広島に向かっているだろうね。
その情報をわざと流しておいたからさ~」
な、なんだって!?じゃあ神崎さんが
大阪に来ない理由って赤羽の仕業だったんだ!?
いつの間にか引き離されていた俺と神崎さんを……。
「何をする気なんだ?目的は?
それに……じゃあ嘘だったのか?
伊波君が弟が居たなんて……」
「うるさい。赤羽さんに失礼だろーが」
黒いスーツ姿の男の1人が俺の顔を押さえつけてきた。
痛い……。
思いっきり押さえつけられるため痛いし苦しい。
すると赤羽は、クスクスと笑いながら止めた。
そして起き上がらされると赤羽と真っ正面に顔を合わせられた。
赤羽は、俺の服を掴むと顔を近づけてきた。
そして整った顔立ちだが冷酷な笑みを浮かべながら
衝撃の事実を告げてきた。
「嘘じゃないさ。伊波亮には、確かに伊波亮太という
年の離れた弟が居た。
しかし僕が指示を出して殺したけどね?
ひき逃げという最高で最低な演出でね」
その言葉に衝撃を受ける。ひき逃げって……。
じゃあ昨日言っていた伊波さんの大切な人って
実の弟さんのことだったのか……?
俺の驚いた顔を見た赤羽は、アハハッと笑っていた。
「彼は、弟を大切に可愛がっていたからね。
ひき逃げで失ってショックを受けていた。そこで
僕は、彼と接触してこう告げたんだよ?
『君が神崎君と一緒に組めば組むほど大切なモノを失う。
大切な弟を殺された気持ちは、どうだい?
君のせいで亮太君は、死んだ。
君が殺したようなものだ』とね……そうしたら
どうだろうか?彼は、精神的に病んで自殺した。
実に簡単だったよ。人の心を陥れ操るのは……」