浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~
「邪魔をしないでくれよ?この子を正統な
赤薔薇会の一員として育てないといけないのだから」
「何が正統だ!!そんなの認めない。立花。
惑わされるな。お前は、教師になる夢があるんだろ?
それにお前は、俺のバディだ。俺のそばに居ればいいだろ!?」
神崎さんのそばに……?
両方の言い分を言われるが、どちらを信じたらいいか
俺には、分からない。それに……。
「……まだ少し意識があるか。駆。言ったよね?
彼は、全て知っていてお前を雇ったってさ。
現に君が俺の弟だと聞いてもそれに対して
動揺してないだろう?彼に騙されるな。
彼は、君を利用しようとしたんだ。君のことなんて見ていない」
俺を利用しようと……した?
「ち、違う。確かに……気づいていたが。
俺は、お前を何よりも大切に思っている。
お前をそちらの道に行かせたくなくて……だから」
「戯れ言を……。いいかい?駆。
彼にとって赤薔薇会は、宿敵だ。
もっとも大切にしていた伊波君を自殺に追い込んだ憎い相手。
そんな奴が赤羽の血を引く君を大切に思うかい?
憎いはずだ……復讐をしたいほどに」
復讐……?そうか。神崎さんは、俺を使い復讐する気だったんだ。
そうだよな……俺……何もない凡人なんだから。
瀬戸さんみたいに刑事じゃないし
リカコさんみたいに情報通でもない。
何よりも神崎さんは、俺を通して伊波さんを見ていた。
俺のことなんて……結局見てなかったんだ。
ずっと引っ掛かっていた言葉がようやく理解する。
俺は、ずっと見てほしかったんだ。
誰でもない自分自身を……。
親に愛されず。施設育ちだった。
だから嬉しかった。こんな俺でも受け入れて
一緒に居られることが……。でも違った。
神崎さんは……ただ俺を使い復讐したいだけだったんだ。
そう気づくと瞳から涙が溢れていた。
これは、悲しみの涙だ。
しかし、だからと言って神崎さんのところに戻れないし
赤羽に従いたいとも思わなかった。
何よりこの血を残しておきたくない。
まだ意識が残っている。利用されるぐらいなら……。
俺は、残った意識を必死に保ちながら拳銃の引き金を
引いて腕を挙げる。そして自分の頭に向けた。
「立花。お前、何をする気だ!?」
神崎さんを撃つことなんて出来ない。
だからせめて……自分で命を絶つことで守りたかった。
俺が出来る唯一のことだったから……。