世界が終わるとき、そこに愛はありますか
「…深景さん…?」


なんて声をかければいいのか分からなかった。


ただ、そのままでいることしかできなかった。


「雪花は…俺から離れていかないで…」


掠れた弱々しい声が耳元で聞こえる。


「……まだ、酔ってる…?」


今の深景さんは深景さんじゃない。


それとも…これが素なのかな。


いつもは冷静沈着で冷たいところもあって、人と一定の距離を保って付き合ってるようなイメージがあるけど、本当の深景さんは、寂しがり屋だったりするのかな…。


「……悪い。今のは忘れて」


急に我に返った深景さんは、パッとあたしから離れて普段通りの口調に戻る。


その目は決まり悪そうに泳いでいた。


「…あたしは離れていかないよ。大丈夫」


捨てられた仔犬を見ているようだった。


どうにか側にいてあげたい、一人にはさせられない。


助けてあげたい。


そう思ったんだ。


たとえ、別の人を想っていたとしても…。
< 125 / 490 >

この作品をシェア

pagetop