世界が終わるとき、そこに愛はありますか
早足で店の外に出ると、一気に呼吸が楽になった。


「…なんでトップキャバ嬢と炫聖会の上層部がこんなところでデートしてんだよ」


明らかにイライラしている涼の声。


きっと今日のことを知ったら、深景さんも怒るだろうな…。


「…もう、帰ろっか」


「そうだね…」


駐車場までの道のり、あたしと涼は一言も発しなかった。


無言で車に乗り込み、エンジン音だけが静寂を破る。


行きより少し荒い運転が、涼の苛立ちを表している。


後味の悪い1日だった。


でも、有意義な1日でもあった。


「涼、そんなにイライラしないで?きっと大丈夫だよ。ちょっと絡まれただけだし、何の問題もないよ」


ハンドルを指で繰り返し叩く涼を見かねてそう言うと、涼はにこっと笑った。


「ごめんね。イライラしてんのバレた?」


その目は笑ってなかった。
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