世界が終わるとき、そこに愛はありますか
綺麗な横顔を見上げると、何もかもがどうでもよくなってくる。


このまま涼の好意に甘えれば、きっと楽だ。


でも、それは自分勝手な行動で、涼を利用しているだけにすぎない。


「なに?俺の顔に何か付いてる?」


「あ…いや…なんでもない」


深景さんを好きでいても報われない。


唯さんのような美しい人を好きでい続けてる深景さんを振り向かせるなんて…。


あたしには無理だ。


そう分かってるのに、深景さんに強く惹かれる。


涼にしとけば…なんて考えてしまう自分が嫌いだ。


涼を逃げ場のように見てしまう自分が嫌い。


こんなに優しくて紳士的な涼を利用しようとするなんて、間違ってる。


音もなく、赤信号で車が止まる。


「雪花ちゃん」


名前を呼ばれ、パッと涼を見上げる。


涼の手があたしの後頭部に回り、整った顔がゆっくり近づいてくる。


「りょ…んっ…」


確かに唇に触れる感触。


あぁ…あたしは最低だ。


最低な女だ。


「…ごめん、涼。ごめんね…」


こんな女でごめん。


あたしは、あなたに逃げた。
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