世界が終わるとき、そこに愛はありますか
玄関に入ると、深景さんは帰ってきてるようだった。


「遅くなるなら連絡ぐらいしろ。心配するだろ」


リビングでスマホを触りながらタバコをふかしている深景さんが、こっちに見向きもせず言う。


「……ごめん」


謝りながら隣に腰かけようとした時、微かに香水の匂いが漂ってきた。


いつもと違う香水だ。


匂いからして女性物。


…女性と一緒にいたんだ。


それも、香水が移るほど長時間、同じ女性と。


…そりゃ、あたし以外のセフレだっているよね。


当たり前。


あたしは特別な女ではない。


深景さんにとっては、ありふれたどこにでもいる都合のいい女。
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