世界が終わるとき、そこに愛はありますか
…唯さんも涼みたいなことを言う。


どうして?
 

深景さんはそんなに悪い人じゃないのに。


唯さんとの件だって、きっと何か事情があったんだ…っ。


「…信じたくない気持ちは分かるけど、事実だからね」


氷のように冷たい声で唯さんは言った。


「まっ、もう何年も前の話だし、今の深景がどうかは知らないけどね。改心してるかもしれないし」


唯さんはそう明るく言いながら立ち上がり、ジュースを注ぎなおしてくれた。


「あっ、そうだ。アイツ案外味覚が子どもだから、ハンバーグとか、オムライスとか作ってあげたら喜ぶと思うよ」


無理に付け加えたような言葉。


深景さんの過去があたしの心に重くのし掛かる。


そんな人を好きになっちゃダメ。


そう思う気持ちだってある。


けど……。


あたしは深景さんのことが─。
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