世界が終わるとき、そこに愛はありますか
今日のところは諦めて家に帰ろうとした時だった。


店の目の前に黒塗りの高級車が停まり、辺りに緊張感が走ったのは。


Snow Sky の周りだけ、まるで切り取られたかのように空気が変わった。


キャッチに一生懸命だったボーイたちは動きを止め、ちょうど店の出入り口にいたキャバ嬢は表情を強張らせている。


高級車のドアが開き、傷一つない綺麗な革靴が姿を覗かせる。


そして同時に店の扉も開き、スーツ姿の凛とした女性が外へ出てきた。


「お待ちしてましたよ。五十嵐さん」


女性は整いすぎた微笑みを、車から降りてきた長身の男に投げかける。


男の顔は作り物のように美しい。


スラッとした長い手足に、綺麗な指。


気だるそうに着崩したスーツの端からチラッと見えたのは和彫りだった。
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