世界が終わるとき、そこに愛はありますか
深景さんが女の唇を奪う。


まるであたしに見せつけるように─。


その女と目が合った。


その女は…ニヤッと口角を上げ、深景さんの首に腕を絡める。


ヒートアップする行為。


淫らな声が響く。


何度も何度も脳裏でハウリングする。


「…う…っ」


耐えられない。


気持ち悪い。


見たくない。


早く逃げなきゃ。


自分を守らなきゃ。


でも。


足が上手く動かない。


ガクガク震えて、立つことすらままならない。


視界がボヤけて何も見えない。


上手く立てずに四つん這いになった手の甲に涙が落ちた。


何滴も何滴も、落ちてくる。
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