世界が終わるとき、そこに愛はありますか
お姉ちゃんの源氏名は莉愛だ。


…そしてこの男はカタギじゃない。


もしかしたら何か知ってるかも─。


「せいぜい悪足掻きしな?楽しませてもらうからよ」


男はそう言い捨て、車に戻ろうとする。


─今チャンスを逃したらもう次はない…。


「─っ待って!」


このチャンスを逃すわけにはいかない。


「藤堂茉莉愛のこと、何か知ってるの?今莉愛って言ったよね?」


男は、早口で捲し立てるあたしの方をチラッと見てにっこり微笑んだ。


さっきまでの鋭い眼光ではなく、優しげな眼差しだった。
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