世界が終わるとき、そこに愛はありますか
トクントクン…と鼓動が速まるのを感じる。


「莉愛の妹か…」


男はそう呟いてあたしを車へ手招きする。


「車の中で話そう。俺も莉愛のこと探してるから」


さっきまでの恐ろしいトーンとは真逆の優しい声色。


優しさはあたしには無縁だった。


こんなに優しい口調に触れたのは初めてだった。


「乗って」


吸い寄せられるように車へ近づき、ろくに警戒もせず黒塗り高級車に乗り込む。


助手席にはタバコを吸っている金髪の男が座っていた。


運転手はスキンヘッドで、到底〝普通の人〟だとは思えない。


運転席の真後ろにあたしが、その左隣に彼が座り、車は動き出した。


「何考えてんの?深景」


金髪の男がニヤニヤしているのがミラー越しに見える。


「…別に。コイツに聞きたいことがあっただけ」


隣に座る彼のオーラがまた変わった。
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