世界が終わるとき、そこに愛はありますか
「作戦とか計画とか、どうでもいい!早く行かせろ!!」 


映像のなかで、オッサンが雪花ちゃんに馬乗りになっている。


『深景さん……っ』


「…雪花……」


深景の力が抜けていく。


顔面蒼白で、その目は虚ろ。


「……深景、行くぞ。行き当たりばったりもたまには悪くない」


とにかく急がないと雪花ちゃんが─っ。


「……俺は行かない」


「はっ?なんでだよ!」


雪花ちゃんは深景の名前を呼んだ。


あんな極限状態で、深景の助けを待っている。


なのに…っ。


「あいつを頼んだ。早く行ってやって」


「…なんでだよ」


深景は俺の問いに答えなかった。


「─行ってくる。その代わり、通話で繋いでおいてくれ。中の様子がわかる方が良い」


リビングを出ようとした俺の背中に、深景の小さな声がぶつかった。


「…さっきの約束も守れない。わかってくれ」
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