世界が終わるとき、そこに愛はありますか
「嫌よ。アタシは死なない。少なくとも、アンタなんかに詫びるために死ぬなんてバカバカしいこと、しないわ」


「──ッッ」


憎悪と殺意が混ざり合う心が、殺意一色に明確に変わった瞬間だった。


「貸して!!」


ザキさんを突き飛ばし、その手からナイフを奪い取る。


それを止めようと慌てて腕を伸ばす深景さん。


「やめろ!!」


深景さんに掴まれそうになった腕を勢いよく振り上げ、憎き女目掛けて─。


「雪花っ!!!」


「ウッ!?」


腹部に強い衝撃を受け、ナイフを持つ手を緩めたまま、後ろに倒される。


あたしに覆い被さる深景さんと、宙を舞う血塗られた銀色のナイフ。


「放して!!!退いてよ!!!」


どれだけジタバタしても身動き一つとれない。


カランカランカラン…


ナイフが床に落ち、無惨にも転がった。


「やめて!!ナイフに触らないで!!それはあたしの─っ!!!」


ザキさんがナイフを拾い上げる。


「ダメ!!あたしはコイツを殺さなきゃいけないの!!」


深景さんがあたしを押さえつける力を強める。


「お姉ちゃんが死んだ元凶はコイツなのに…っ!!!どうしてコイツは生きてるの!?あたしはあんなにツラい生活をしてたのに、どうしてこの女は…っっ!!!」


おかしいよ…っ。


この世の中、おかしいよ…っ。


消えるべき命が灯りつづけ、誰かを照らす光ほどすぐに消えてしまう。


「おかしいよっ!!!深景さんもザキさんも!!間違ってる!!お願いだから退いて!深景さん!!」
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