世界が終わるとき、そこに愛はありますか
失踪
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─バタンッ
車のドアが閉まる音で、半分夢の中にあった意識が現実に引き戻される。
「疲れたんなら寝てろ」
「ん…いいよ別に。運転してもらってるし」
寝ぼけ眼で助手席に移動すると、勝手に座席を倒され、深景さんのコートまで掛けられてしまった。
嬉しいけど…。
「いいの?ここから家まで遠いでしょ」
「お前はいつから俺に気を遣うようになったんだよ」
そういえば今までは、ベッドのど真ん中で大の字になって寝ることだってあったな…。
関係がギスギスし出してからはそんなことなかったから忘れてたけど…。
「…でもまぁ、ありがとな。あんまりそうやって気を配ってくれる奴に出会ったことないし」
深景さんの運転が上手いから眠くなっちゃうんだろうな。
運転中の空気も心地いいしね。
「…んじゃ、帰るか。あの女なら、ザキが責任持って地獄に送り届けてやってるから安心しろ」