世界が終わるとき、そこに愛はありますか
全身が震えている。


多重人格のように人が変わる涼を目の前にして、恐怖と諦めがのし掛かってくるんだ。


もう助からない。


あたしはここで殺される運命なんだ。


「…涼…。もう、元には戻れないの…?」


ピリピリした空気はあったけど、何だかんだ楽しかった涼とのデートが蘇る。


もう、あの頃には戻れないの…?


「もう遅い。ごめん、雪花ちゃん」


悲しそうに目を伏せて、涼はあたしの口に睡眠薬を押し込んだ。


「飲み込まないなら、その体勢のまま無理やり水流し込むから」


仰向けの状態で水を流し込まれたら溺れてしまう。


もう…どう足掻いても助からない。


「涼……」


まさか…涼に殺されちゃうなんて。


こんな日が来るなんて、思ってもなかったよ…。


錠剤が確かに喉を通る感覚がした。


「しばらくしたら眠くなるだろうから、それまでは俺と話でもしよっか」
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