世界が終わるとき、そこに愛はありますか
浅香さんが躊躇なくロッジの鉄扉を開ける。


数日前に彼と来たときと何も変わってない。


「俺から離れんなよ」


「……カッコつけないで」


「あ?」


そういうセリフを言っていいのは…。


言ってていいのは…っ。


「…はぁ」


なんで、彼の顔がチラつくんだろう。


あんな最低な男…こっちから願い下げなのに。


「入るぞ」


「うん」


一番奥の部屋。


母親が縛りつけられていた部屋。


その鉄扉を浅香さんが勢いよく開けた。


右手に銃を構えて、あたしを庇いながら。


浅香さんの肩越しに、彼は立っていた。


窓辺に佇み、見えもしない大晦日の空を見上げて。


そして、丸腰の深景さんの前には銃口をこちらに向けるザキさん。
< 480 / 490 >

この作品をシェア

pagetop