世界が終わるとき、そこに愛はありますか
『殺した』


軽かった調子が一転して氷のような冷たい刃に変わった。


「…殺した…?」


意味が…わからない。


『まっ、そういうことだから、お前の大切なお姉ちゃんはもう二度と帰ってこないよ』


『ねぇちょっとぉ。相手はまだ小学生だよぉ?』


別の人の声もする。


女の声だ。


『いーんだよ。死んだ人間の帰りをいつまでも待ち続けるよりマシだろ』


…死んだ人間。


「…なんで」


『え?』


「なんで殺したの。あたしの唯一の肉親を…っ。なんで殺したの」


本当は大声で怒鳴りつけたかった。


でも、そんな気力はどこからも沸いてこないんだ。


「…ねぇ…どうして…?」


窓の外から元気な鳩が鳴く声が聞こえる。


バイクが通る音がする。


いつも通りの朝が広がっている。
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