世界が終わるとき、そこに愛はありますか
意味が分からない。


けど反論してる場合じゃない。


早く、早く、逃げなきゃ…。


スパッ


「ゥアッッ」


とんでもなく強い痛みがふくらはぎに加わる。


傷口を見ていなくても傷の深さはわかる。


ドクドクと血管が脈打ちながらあたしの血液を床へ押し出していく。


あまりの痛みに目の前が真っ白になる。


ダメだ、しっかりしろあたし…っ。


逃げなきゃ殺される─。


とにかく、あと数歩頑張れば外だ…っ


1度外に出てしまえば、さすがに包丁を持って追いかけてくることはないだろう。


「助けて…」


ガチャガチャガチャ


鍵が開かないっ


何で…っ


いつもはスムーズに開くのに…っ。


「逃げるなっつってんだろ!!!」


ドンッ


散々棍棒で殴られてみみず腫になっているであろう背中を蹴り飛ばされる。


「痛い…っ、痛いよ…っ誰か…っ」


痛みに震える手でなんとか鍵を開き、重い玄関扉を押して外へ転がり出る。


予想通り、母親は玄関から外に出てくることはなかった。


家の前から少し身体を引きずったところで、すべての力が抜けていくのを感じた。
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