世界が終わるとき、そこに愛はありますか

解放

深景さんに連れられてやって来た病院は普通の病院じゃなかった。


外観は普通の一軒家なのに、中に入ると受付や待ち合い室がある。


けど診察室は見当たらない。


あたし以外の患者さんもいない。


普通とは違う異様な空気を漂わせている。


「葛原(くずはら)先生に会わせてもらえる?」


あたしを抱き抱えたまま、深景さんは受付の看護師さんにそう告げた。


「今ちょうど手が空いてるので、ご自由にどうぞ」


看護師さんはやはり普通の病院とは違い、真っ赤なリップに濃いアイメイクをしている。

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