世界が終わるとき、そこに愛はありますか
「んなことより、これからどうすんの?」


「…どうって言われても……。まぁ、帰るしかないからね。あの家以外にあたしの居場所なんてないし」


あの家にも居場所はないけど…唯一ある〝帰る場所〟だ。


あの家からは出られない。


叔母も叔父もあたしを探し回るだろう。


彼らからは逃げられない。


「……ここに居ると俺の敵から狙われるかもしれない。命が危ないかもしれない。それでもいいんなら、しばらくここに住めばいい」


「…え……?」


ここにいてもいい…ってこと…?


「深景さんが嫌じゃなければ…あたしはここにいたい。ホントにいいの…?」


「いーよ。…まぁ交換条件はあるけど」


あの家に帰らなくてもいいんだ。


逃げ出すことができたんだ。


「夜遅くに出歩かないこと、常に周囲を警戒すること、些細なことでも異変があればすぐに俺に伝えること。この3つを守るんなら、ここに住んでもいい」


どれもあたしを守るため。


とことん優しいんだ。


ちゃんとあたしを守ろうとしてくれるんだ。


「わかった。しっかり守る」


「絶対だからな。それと、俺の仕事の邪魔だけはするな。俺の仕事に口を挟むな。いいな?」


それだけ言うと、深景さんは再びパソコンに没頭してしまい、あたしの方を向くことはなかった。


やっぱり深景さんはあたしの救世主なんだ。


あの日、深景さんに出逢えて本当に良かった。


あの夜の少しの勇気のおかけで、今あたしは幸せを掴もうとしているんだ。
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