世界が終わるとき、そこに愛はありますか

想い人

葛原先生が腕のいい医者だというのは本当らしく、あれから数日経った今、痛みはほとんどない。


叔母に殴られることも、叔父から性的暴行を受けることもない今の生活が幸せで幸せで仕方ない。


「雪花」


珍しくあたしより先にベッドに入っていた深景さんが小さくあたしの名前を呼んだ。


「何?」


あたしもその隣に寝転がり、目を合わせたその瞬間、唇に温かいものが触れた。


戸惑うあたしをよそに、深景さんは慣れたように首筋にもキスを落とす。


「ちょっと…」


気がつけば深景さんは、あたしに覆い被さるような姿勢をとっていた。


深景さんの脚と手で身体を固定され、抵抗しようにも抵抗できない。


いや、抵抗しようとなんて思ってない。


深景さんは叔父とは違う。


過去に幼いあたしを犯した卑劣な男たちとも違う。


深景さんになら抱かれてもいい。


「ん…っ」


そんなあたしの思いに比例するように、深景さんのキスは激しさを増す。


「嫌がんないんだな」


意地悪な顔をしてあたしをからかう。


「……優しくしてね」


「それは保証できねぇな」


フッと笑みを浮かべ、またあたしの唇を奪う。


そして深景さんは枕元の間接照明の電気を落としたのだった。
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