キスの予約【短編】
その日の放課後、俺はいつものように屋上にいた。
「ねぇ~広大?今日はどのくらい一緒にいれるのぉ?」
「………」
昼間の光景が頭から離れない。
「ねぇってばぁ?」
「え?あぁ、ごめん。今日は沙耶だけだよ。」
そう言って俺はつくり笑顔を見せる。
「そぉ?よかった~最近の広大、仕事うけてないって聞いてたからさぁ。」
「…大丈夫。もう戻ったからさ。」
「戻った?なにそれ~?」
そう、もう忘れた。
もう思い出さない。
もう…好きじゃない。
―タタタッ
「…………」
この音は、優雨が階段を上ってくる音だ。
「広大?」
「…沙耶。」
「なぁに…っ…ん…」
―ガチャッ
「葉山!……って…」
「……ちょ…広大、誰か来たよ?知ってる人?」
「…さぁ?知らない。」
「…は…やま?」